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弊社ロサンゼルスオフィスから北に30分ほどの距離に、広告型検索エンジンの最大手、Overture(オーバーチュア)の本社はあります。ネットバブルの終焉 とともに淘汰されるインターネット産業のなかで、同社は着実にマーケットを拡大し、検索エンジン業界第一位の収益を上げています (Yahoo!は検索ディレクトリーのコンテンツプロバイダー、AOLはISP検索ポータルとされる)。そのOvertureの日本進出が始まります。
GoTo.com(現Overture/オーバーチュア)はロサンゼルスで1997年に設立された広告型検索エンジンで、ハイテク景気の真只中の1999年6月
にパブリックに公開されました。株式公開後20ドルの株価が2日間で40ドル、70ドルと高騰したのはまだ記憶に新しいところです。
IPOのみでなくさまざまな話題で紙面を賑わせる同社は文字通りWallストリートのブローカーの間でも注目を集めてきました。
同社は2001年10月からグリーンだったインターフェース・カラーをダークブルーに変え、同時にGoTo.com(ティッカーシンボル
: goto)からOverture Services, Inc.(ティッカー:over)へとコーポレートネームも変更しました。その第一の理由は、
急増していた広告型検索エンジンのなかでも同社が最大企業であることをアピールする目的であり、第二の理由は、
ウォルトディズニー(ティッカー:DIS)のgo.comなどGoTo.comと類似したブランドネームとの違いを明確化することでした。
2001年暮れには会社名変更にともない同社から膨大なDMが全米に配送されていました。この社名とロゴの変更がセカンド
IPOとでもいうべきPR効果をもたらし、さらに同社の知名度波及に相乗効果を与えるものだったと考えられます。
しかもこのシフティングは、エンターテインメント・ジャイアント、ウォルトディズニーからTM(トレードマーク)使用に
関しての係争で既に2150万ドルの和解金を受け取った後の話です。
Overtureはコーポレートイメージやマーケティングに関しては緻密なまでの戦略をプラニングし、非常に強いマネージメント力で
ポータルサイトへのシェアーを拡張してきました。2002年初頭にはアメリカの検索エンジン利用者の85%以上がYahoo、MSN、
AOLの3大ポータルを含むアメリカの検索エンジン経由でOvertureの検索結果に到達するという、
圧倒的なシェアーとファイナンシャル・サクセスを獲得するに至りました。
さてOverture(オーバーチュア)の成長は何から支えられてきたのでしょうか?決して一元的にIR力やPR力の優劣が差をつけたという訳では
ありません。答えは同社のビジネスモデル、Sponsored Search Engine(広告型検索エンジン)にあるといえます。
同社はいち早く検索エンジンの媒体特性に着目しました。
検索エンジンは、プロダクトやサービスを探している消費者(需要)とそれを提供したいサプライヤー(供給)とを結びつける
マッチングトゥールとしての媒体特性に優れている。すなわち「検索エンジン=広告媒体」という位置づけを考えついたのです。
成功要因としては、検索エンジンサービス1本に絞り込んだこと(以前はバナー広告などをひとつも掲載していなかった)と、
検索結果の上位をアドバタイザーに販売し、広告料を徴収する新しい収益モデルに徹したことの2つが上げられます。
Hoovers.comでOverture(オーバーチュア)の競合がGoogleだけでなくDouble Clickや24/7などのオンライン・メディアレップ(広告代理店)
と併記されているところからもOvertureのビジネスは広告業に限りなく近いものだといえます。
具体的にOvertureのビジネスの仕組みは、まず検索キーワードの検索結果上位を入札制で広告主(アドバタイザーという言葉を使用)
に売り、検索エンジンのユーザーがそれをクリックしたごとに課金するという簡単な理論に基づいています。当地アメリカでは
検索エンジンを利用したマーケティング活動は一般化しており、例えば検索キーワード「ブローカー」で表示されるAmeritrade
はワンクリック12ドル、「ギャンブル」などのキーワードで表示される上位はワンクリックにつき約20ドルという高額で入札
されています。
ここで考えられることは、いかに検索エンジンの上位に表示されることに企業が真剣になっているか、どれだけ多額の投資をして
消費者を取り囲もうとしているかです。もちろん上位を入札したらそれだけのコストが費やされるはずです。例えばひと月で
100万クリックされたとしてクリック毎1ドルであれば、月のコストは100万ドル(約1億2200万円/2002年6月現在)となります。
入札制は民主主義で資本主義的に公正な制度ですが、入札額と上限をひとつ間違うと痛い目にあうことになります。また同じ
競合から何千何万とクリックされるというクリック・フラウドの問題も深刻化しています。それを横目にOvertureはリベニュー
の拡大に余念はなくついに2002年1stQuaterでは142.8ミリオンという数字を記録し文字通り検索エンジンでは首位
(Yahooはディレクトリー)の売り上げでネットインカムでも29.3ミリオンという数字を残しています。
加えて4月には通信機器の大手Lucent Technology(ティッカー;lu)を引きずり落ろしインターネット100にも格付けされるに
至りました。時期はすでに収益モデルの改善にあり、右に倣えで検索結果の上位は売らなきゃ損とばかりに検索エンジン各社とも
順位の販売に乗り出し始めたのです。
2002年4月27日、ロサンゼルスで開催された「Sponsored Search Engine/CRM」のランチェオン(昼食会合)に出席するために「Internet
World Spring 2002」の会場を訪れました。Inktomiのブースは最も広く、賑わいを見せていました。Overture(オーバーチュア)は文字通り営業・
営業・営業と広告主の獲得に帆走し、カンファランス開催3日間は25%のディスカウント・プロモーションを行なっていました。
セールスの人材がよく訓練されておりプラクティカルに仕事をしている印象を強く受けました。
さてランチェオンではPeople SoftのCEOやOvertureのSVP等と同席し、(詳細はここではコメントできませんが)業界の特に
ビジネスマネージメントについて議論が交えられました。また別の話題として最も注目されたのはちょうど1stQuaterの決算発表
を済ませたばかりのOvertureの好調な業績についてと、そのビジネスモデルについてです。
日本人としてやはり興味がある同社の日本進出予定についてお伺いしたところ、2002年の3rdQuaterに照準を合わせており
現時点では立ち上げ作業も順調に進行しているとのコメントを頂きました。世界第2位のインターネット普及率の日本市場は
当然魅力的なマーケットです。日本進出については極めて意欲的で、周到に準備を進めているといった印象を受けました。
Overtureが日本に進出することは、日本国内インターネット産業の収益モデル見直しの意味でも極めて大きなインパクトを与えるものと
考えられます。
さて、承知の通り2002年6月Overture Japan設立のPR記者会見が行なわれました。まだ大手新聞社が記事にするまでの社会的
影響は見られなかったものの、オンライン関連のニュースサイト各社ともOvertureの日本進出に関する見出しをつけていました。
いわくOvertureは2003年1stQuaterから日本で業務を開始するとのこと。4月に頂いたスタート時期からはかなりスタートアップ
が遅れているように推測されましたが、すでにNTT系列のgooとTerra系Lycosに検索結果を供給するアグリーメントが終結された
ようですのでまずまずの成果が生まれているといえます。
ただこの2ポータルだけではサービスを開始するにはシェアーが不足していると考えられます。Overtureのエンジンと合わせても
国内オンライン・アクティブユーザーの30%のシェアーにも届きません。次にどのポータルと提携できるか、この点がOvertureの命運
を分けるポイントになりそうです。
アメリカでは2002年に入りGoogleのプロフィタブル・プロセスへのシフティングが明確になってきました。3月にはOverture(オーバーチュア)の
ビジネスモデルに相当するCost-Per-Clickを広告主向けに販売を開始、Earth Link(アメリカ2位のISP)、AOL
(世界最大ISPの巨大ポータル)、Ask Jeeves(Teomaを買収した検索エンジン)とのディールをOvertureから奪取しております。
OvertureはInktomiのデータベースとAkamai Technologiesのエンジン機能がベースの検索エンジンです。
しかし今日のポータルや消費者の評価はGoogleの的確な検索能力に極めて傾いていると推測されます。OvertureはMSN、
Yahooとの長期契約に成功していますが、検索エンジン各社の追随に対して現在同社の持つシェアーをどう維持できるかが
注目されます。
さて日本国内に目を向けますとさらに厳しい状況が予想されます。つまり国内ではOvertureのライバルであるGoogleが2000年秋
から基盤をつくり、すでに国内主要検索エンジン10社の検索結果として採用されているという点。加えてGoogleはCPC型広告
サービスをすでに3月から開始しているという点があげられます。広告型検索エンジンのビジネスは、検索結果を表示する
ポータルやISPとの提携でどれだけのシェアーを占めることができるか、またスポンサーである広告主をどれだけ獲得できるか、
の2つの要因が共に揃ってはじめて収益が期待されます。
言葉を換えれば、検索結果に表示されるポータルが少なければ広告主は検索結果上位を購買しませんし(もしくは入札価格が
低額取引される)、広告主が少なければポータルも採用を見送ることになります(収益率に見合わないため)。Overtureが日本で
成功を収めるためには、国内最大ポータルであるYahoo! Japanか、Yahooに次ぐシェアーを持ちOvertureと同じエンジン
であるInktomiを採用しているMSN Japanのいずれかをパートナーにできなければ勝算は極めて薄いものと考えられます。
また2002年6月には国内初の広告型検索エンジン、Zubakenがスタートしています。この動きとExciteなどの検索結果に
広告提供を開始した、J-Wordsなどの新進勢力とどう戦っていくのかも注目されるところです。
Overture(オーバーチュア)最新動向/速報ニュース(英語)
* 用語:以下は全てOvertureと同じビジネスモデルのことを指します
> Sponsored Search Engine=スポンサードサーチエンジン=広告型検索エンジン
> Pay-For-Performance=PFP=成果に応じた課金 (Overtureが提唱)
> Pay-Per-Click=PPC=クリック毎課金 (Overtureが提唱)
> Cost-Per-Click=CPC=同上 (Googleが提唱)
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